駐妻の人間関係にモヤモヤしたら読みたい本⇒『ホライズン』小島慶子(著)

stevepb / Pixabay

三連休は小島慶子さんの『ホライズン』という小説を読んでいました。

この本はいわゆる「駐在妻(駐妻)」をテーマに書かれており、今の自分自身の境遇とも重なって、390ページ一気に読んでしまいました…!

私はタイに来てから人間関係に悩んだことは特にないんですけど(そもそも知り合いが多くない)、来タイ前は、駐妻生活=まさにこの小説に書いてあるような世界を想像していて、いちいち共感したり、反論したりしながら読んでいました。

ちなみにこの小説はフィクションです。

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『ホライズン』内容紹介

主人公の真知子は海外企業に職を得た夫と共に南半球へ移住。娘を出産し、新生活が始まった。美しく小さな異国の街に暮らす日本人達のコミュニティには、夫の職業や住む場所によって暗黙のヒエラルキーが築かれていた。その中で真知子は、投資銀行に勤める夫を持つ郁子、商社マンの妻の宏美、現地の日本人シェフと再婚した弓子らと親しくなる。しかし、日本人会のバザーで起こった事件をきっかけに、彼女たちの関係は一気にあやういものになっていく……。

孤独と自立、家族と友情……。今、女性が「生きる」ことに正面から向き合った傑作長篇。

※Amazonの内容紹介から引用

本編では、
・一流商社マンの妻で自身もバリバリのキャリアウーマンだった宏子。子なし
・夫は投資銀行に勤めるサラリーマンで大の噂好きの郁子。子なし (※←「駐妻」というと郁子のような人が多いイメージでした。今は違うけど)
・夫は研究職で現地企業に就職、学歴コンプレックスがあり自分に自信がない真知子。子あり
・日本食レストランを経営する夫と再婚。小学生になる前夫との息子と海を渡ってきた弓子。子あり
という4人の登場人物を中心に、物語が展開されていきます。

仕事を辞めた悔い、子供の有無、いずれ日本に帰る者と現地での生を全うする覚悟を決めた者。日本人同士にある幾つもの差異が摩擦を生む。

という紹介文にもあるように、それぞれが心に悩みを抱えながら海外生活を送っている様子が細かに描かれています。

私がメモしたのは以下です。

もう一度働きたいという気持ちはあったが、人の尊厳をすり減らすような、あの東京の通勤ラッシュを思うと気が滅入る。(中略)……人が少ないというだけで、こんなにも気持ちがおおらかになるものかと思う。

自分で決めて会社を辞めたのに、どこかでは負けだと思っていた。こうして夫の赴任に従って海外に引っ越すのは、女の人生としては恵まれているのだとわかっている。だけど……

「ここにはね、階級があるのよ」
「カイキュウ?」
「……どうでもいいでしょ。でもみんな、お互いに立場を意識してすっごい気を使ってるの。」

悠々自適なんて、とんでもない。晴也の勤める商社の婦人会では、夫の肩書でヒエラルキーが決まっていた。一番のボスは東京のお嬢様学校大学出身の総支配人夫人で、同じ大学出身の女たちが親衛隊のように傅いている。夫の肩書きと学歴、本人の学歴、様々な基準で格付けがされ、採点される。低学歴でも高学歴すぎてもダメ、ブスでも美人でもダメ、ダサくてもオシャレすぎても除け者にされる。

「結婚しても、転勤しても、子どもができても全然暮らしを変えなくていい晴也には、私の気持ちなんてわからないよ。この先もずっと仕事があって、いつでも居場所があるんだもんね。」

「だから、人間関係は選べないってこと。だーれもいないところでひとりぼっちで生きていける人なんて、いない。(中略)とくに、仕事をしていない女は、男と違って肩書きがないから、とりあえず群れなきゃ生きていけないのよ。どんな腐れ縁の、うわべだけの群れでも、所属する場所があるって大事なことなの。」

「海外に住むって、広い世界に出て行くことかと思っていたんだけど、より狭い世間に閉じ込められるってことだったのね。現地の社会になんて、そう簡単に溶け込めないもん。」

読後の感想

こんな嫌なヤツ実際にいないだろ!とか、そこまでして日本人の集まりに拘らなくてもいいじゃん、とツッコミながら読み進めていましたが、
日本人の数が少ない国だと、夫や子どもの人間関係のために合わない人とも付き合わざるを得ない状況があるのかもしれません。

バンコクは在住日本人の数が多いので、小説に出てくるような狭すぎる世界とはまた事情が異なると思いますが、
駐妻ならではの感じる部分だったり、特に宏子が直面した自身の仕事と結婚生活の葛藤には共感する部分がありました。

(未だにあるのかはわかりませんが、)過去の学歴とか、パートナーがどういう仕事をしているかで相手をマウンティングするのはナンセンスで時間のムダだと思うので、
そういうのは無視して、せっかくの駐在期間にしか出来ないことに集中すればいいと思います。

あとは、結婚も海外に付いていくことも自分で選んだことだと思うので、異国での生活に対して愚痴りすぎないことですかね。

もし生活に不満があるのであれば、どうすれば解決できるのか、改善策にフォーカスするほうが生産的だし、精神的にも良いのでは?と(自戒を込めて)思いました。

というわけで『ホライズン』、普段私は小説はあまり読まないのですが、ボリュームのわりにかなり読みやすかったです!
Kindle版も購入できます。

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